喪女と見る鬱映画〜エスター・ファーストキル〜

お久しぶりですとかもうどうでもいいです。

観ました、『エスター続編』。

あれほど楽しみにしてたのに公開期間中多忙すぎて結局映画館に行くことができずオンオン泣いてたんですが7月現在既にアマプラ無料に入ってて狂喜しました。早すぎん?嬉しいけども

 

というわけで早速感想です。ネタバレ全開。

 

結局25歳を9歳に見せることはできたのか

結論から言うとそんなことどうでもよくなるくらい普通に話が面白かった。
どうしてもそのへんに着目しがちな冒頭の精神病院のシーンとかは違和感があったりなかったり…って感じだったけどストーリーが進むにつれそっちに引き込まれて「無理あるな〜」とかほとんど思うことはなくなった。細かいところはガバガバだが(後述)大筋はめちゃくちゃ良い脚本だった。

というか無印観た人はもちろんエスターことリーナが30代であることは最序盤で明かされるので『やけに老けた9歳児』というビジュアルで正解なんだよな。

 

今回も健在だった『どんでん返し』

前作の『9歳の子供だと思ってたら実は30代の女だった』という特大どんでん返し。正直これを超えることはできないと思ってたので今作は普通にリーナの過去を描いた話だろうと割り切っていたが予想を遥かに超えてきた。

寄生先の家族がエスターに匹敵するレベルのサイコパスだったでござるの巻。

これ予想できた人いる?いたら手挙げてほしい。嘘つけお前って言うんで。
どういう確率だよとかいうリアリティは最初から求めてない。これを思いついただけでもうこの映画としての価値は充分だと思う。

 

その他も光る無印リスペクト

無印オマージュも所々垣間見れて前作ファンはニッコリできたと思います。
何てったって今回もパパが無能!!やったぜ!!
あとはババア同士のプロレス大会ですね。今回は前座にvs兄もあるぞ!
無印も今回もママのフィジカルがバケモン。そしてそれに対等に渡り合う肉体年齢9歳のはずのリーナさん。絶対嘘だろ。9歳児が成人女性と並ぶフィジカルを得られるトレーニングあったら教えてほしい。

 

しかし細かい粗は目立つ

ここまで褒めちぎってきたが一応の整合性はとれているとはいえ細かいツッコミ所は多々あるので以下順に挙げていく。なにせ一回観ただけなので解決済の問題だったらすみません。

 

リーナの『7人殺し』

無印でリーナは「過去7人を殺めている」と言われている。
ここで本作でのリーナのキル数を振り返ってみる。
・オルブライト一家3人
・刑事
・芸術療法士
・病院職員(ロリコン

…6人。一応他の患者をけしかけて殺した警備員を入れれば7人。

6人カウントなら最初の一人はいつなんだそれがファーストキルなんじゃないかということになるし、本作ラストでリーナは何事もなかったように『火事になったオルブライト家の唯一の生き残りの娘=(孤児)、エスター』として孤児院送りになっている。つまりはオルブライト家での一件は完全に揉み消しに成功している。

にもかかわらず無印ラストで最初の精神病院から7人殺しの殺人鬼と言われている。…ということはオルブライト家の一件はこの時点で明るみになっている?にしても芸術療法士の家で優雅にワイン飲みながらパソコンいじってる時点でここまでの足取りは掴めてるはずなのにそっから2年弱も何やってんだって話なのだが。

 

警備もできんのかこのザルゥ!

そもそも冒頭で精神病院にいた時点のリーナの罪状って詐欺、窃盗のみだっけ。まだ殺してない…よね?
頭豆腐でできとるんかって感じのロリコン職員を殺して始まる脱走劇。

犯罪者を収容している病院で全てをセキュリティカード一枚で通すな〜〜〜〜!!!

普通の精神病棟でもカードキーの他に複数の物理錠で施錠してるって聞いたことあるぞ。ザルが過ぎる。

 

ママの狙い

いやなんで引き取ったの???
失踪扱いにして殺した娘を名乗る人物が現れた!これで失踪児を出した家の汚名も拭えるし夫も色んな意味で元気になったしもし娘の死体が見つかってもエスターならここにいますけど?で通せるぜ!ってこと?お前も頭豆腐か?

実際死体が見つかったらDNA鑑定でアウトなのは言わずもがな(というかそもそもリーナがエスターだと名乗り上げた時点でDNA鑑定せえという話でもある)、エスターを名乗る謎の少女が30代の女だとはさすがに予想外だったママ。それ以前に既に死亡した娘を名乗って現れた9歳児って怖すぎないか。本当に9歳だったとして親に捨てられた本物の孤児でいい家に取り入ってやろうと失踪児になりきる頭脳がある9歳児、怖い。

ていうかリーナが車奪ってウキウキでタバコふかしながらドライブしてたら警官に捕まったシーンで既にママが告発したと思ってた。もう決裂寸前だったし「娘が勝手に車運転して逃げたんです!いや娘じゃない!あれは30代の犯罪者なの!!捕まえて!!」って。

それにいくら換気したとはいえ呼び止められたタイミングで絶対タバコ臭したろ。スルーすな。タバコ臭は百歩譲っても警察、あっさり引き渡してお帰りあそばしてたけど9歳児がガンガン運転してたことについてもっとこう、あるだろう。それともアメリカでは稀によくあることなんですか。怖い怖い。

その後も屋根の縁に成人女性と腕力だけでぶら下がって最終的に打ち勝ったりしてるけどまあ『前日譚』の役割は果たしたのではと思う。

 

結局『ファースト・キル』とは

このタイトルからするとリーナがいつ『最初の殺人』を犯したか、を語る話だと思いがちだがそれまでただ子どものふりをして窃盗や詐欺を働くだけだった女がいかにして『女としての愛を得るために様々な家庭に入り込むサイコキラー、リーナ(エスター)』になったのか、を描いた作品と言うと腑に落ちる感がある。

前作を観た人の一部はリーナの境遇に同情する人もいるだろう。彼女の動機は『30代の女として幸せになりたい』だけなのだから。(実際応援上映では「がんばれ!」の声が飛び交ったとかなんとか)

今作は前日譚であると同時にリーナという人間にフォーカスした特別編のような雰囲気もある。ある種ヒューマンドラマなのかもしれない。

 

そんな感じの続編でした。

エスター(リーナ)の物語』としては充分に完結したと思うのでここから先はこれ以上蛇足になる作品を出さないでくれと祈るばかりである。
でも今作のママのスピンオフならちょっと観たい。