喪女と見る鬱映画〜パンズ・ラビリンス〜

 

久々につまんね〜映画観たなと思ったので。

 

作品名自体はかなり前に知ったのだが『調べても調べても何映画かわからない』という理由で後回しになっていた。

ツタヤでパケ裏見てもファンタジーを謳っておきながら写ってるカットはなんかグロいバケモンだしかといってホラーとも書いてないし「何この…何?」状態が深まるだけとなった。じゃあ尚更観てみればいいじゃんという話なのだが他にも観たいのもあったしエネルギー消費を鑑みると後回しにするしかなかった。

 

そんなこんなでアマプラのウォッチリストに入れっぱなしにすること数年。ずっとレンタル限定だったが遂に2022年11月現在無料視聴にやってきたので観ることにした。

再生ボタンを押す直前まで結局何映画かはわからなかった。


というわけで感想です。当然ネタバレ有。

 

パンズ・ラビリンス』感想


序盤はよかった、序盤は

母の再婚の巻き添えで過酷な生活を強いられることになってしまった可哀想な少女オフェリア。唯一の心の拠り所はおとぎ話。ゲリラ相手に内戦をしている大尉の父の拠点に移り住む道中で奇妙な石像とカマキリ(オフェリアは妖精と呼んでいる)に出会い、おとぎ話の世界と重ねて目を輝かせる。

ここは視聴者もオフェリアと同じ心境になれるポイントだろう。これからオフェリアはどんなファンタジーに触れていくのか、冒頭語られた地下世界にアリスのように落っこちてしまうのか、シンプルにワクワクできた。

見た目はおどろおどろしいが動きはどこか人間くさいというかコミカルなパンと出会い、本に書かれた3つの試練をクリアするよう伝えられるオフェリア。

あ、そういう感じね。試練って現実世界で行われる感じなのね。と思ったが試練への入口までは現実で道中はファンタジー世界なので行ったり来たり、という感じである。今作のコンセプトは『現実とファンタジーの交錯』であるがこれもその一部であろう。


2つ目の試練…

はい、失敗しました。

ファンタジー世界に入り『短剣を取ってくる』というミッション自体は遂行したものの、『途中で食べ物を口にしてはいけない(ついでに『時間内に戻ってくる』)』という誓約を道中つまみ食いして果たせなかったためパンは激怒、「お前に王女の資格はない」と消えてしまう。

 

ここで萎えた。もう切っていいかな、と思った。

 

この展開の時点でオチは二択だ。

 

①夢から覚めた少女は少し大人になって孤独に現実を歩むことになりましたEND(もしくはあっさり殺されて終わり)
②もう一度チャンスを与えられたオフェリアは今度こそ試練を果たし無事王女様になって幸せに暮らしましたEND

 

どっちかである。

 

伊達にバッドエンダーやってねえんだ、それくらい想像つく。
だけど一応名のある作品、こっから予想外のどんでん返ししたら絶賛してやんよ、と鼻で笑い視聴続行した。

 

ちなみに作品名で画像検索すると出てくる手に眼があるキモいバケモン(ペイルマン)が出てくるのもこのシーンです。

このビジュ見たらホラーと勘違いする層がいてもおかしくないが(実際追いかけてくるのでこのシーンだけに関してはホラーだが)ここまでインパクトのあるクリーチャーは他には出てこないので安心してください(?)

 

メルセデス無双

萎えてからはメルセデスさん(親父のアジトのメイド兼反乱軍のスパイ)の無双っぷりを楽しむ映画と化した。

 

メルセデス鬼つええ!このまま親父も周りも全員ブッ殺していこうぜ!

 

直接ブッ殺すまではいかずともあの親父に一泡吹かせオフェリアを捜索&救出する余裕すら見せつつ完全勝利したメルセデスと仲間達。つええ。


ラストシーン

結局上記の①と②のミックスのようなオチでした。がっかり。

パンと会話しているオフェリアが何もない宙に向かって喋っている状態であるのを親父の視点を通して見せられたところで一連のファンタジーは全てオフェリアの空想であったことが明かされる。
そして撃たれたオフェリアは、今際の際に試練は果たされ王女として迎え入れられる夢を見ながら絶命。

 

ああ、ハイ。

という感想しか出なかった。

 

戦火の中を生きる現実の少女の末路としては可哀想、でも本人は満足して死んだので幸せ。
教科書のようなメリーバッドエンド。

 

つまんね〜〜〜〜。

 

何の面白味もないお話でしたとさ。


画とコンセプト

とまあストーリーは陳腐そのものだが金かかってるな〜って感じの画面の華やかさと『現実とファンタジーの交錯』というコンセプト自体は決して悪くなかった。

特にCG。07年にしては相当クオリティ高くない?現実世界の画面の暗さとファンタジー世界の過剰なまでの煌びやかさも対比としては美しいと思った。

コンセプトに関してもパンをはじめとするファンタジーはオフェリアの空想だったわけだが、全部が全部空想ではない。

パンが与えたマンドラゴラの姿は大人たちも認識している(ただし動いている様を視認していたかは微妙なのでただの変な形の植物にしか見えていないかもしれない)し、何より最初の試練でオフェリアが木の根の蛙を倒したことで本当に木が蘇り花を咲かせている。VS蛙が空想だったなら木は死んだままのはずなのに。

このあたりの『魔法は本当はあるのかもしれないね✨』みたいなディズニーチックな雰囲気は好きな人は好きだろう。

 

結局雰囲気映画なのだ。

ストーリーや設定の緻密さや俳優の渾身の演技でブン殴ってくるタイプではない。

実際この作品が好きな人は「世界観が好き」「雰囲気が好き」という意見が多い。
私もいわゆる雰囲気映画・雰囲気ゲーと呼ばれるやつの中に好きな作品も多々あるので気持ちはわかる。だがパンズ・ラビリンスの空気感は私には合わなかった、というだけの話である。


で、結局何映画なのか

観た上でカテゴライズしろと言われてもめちゃくちゃ難しいな……と思いました。
確かに広義で括るならダークファンタジー…だと思う。
しかし今や『ダークファンタジー』の定義自体が広がりすぎてこの言葉だけでは説明不足すぎるのだ。
実際22年現在『ダークファンタジー』という言葉を聞いて各々が想像するものは千差万別だろう。

 

かわいらしい女の子が血みどろで戦う話。
一見王道ファンタジーに見えて裏設定が鬱すぎる話。
キラキラした魔法世界なのになんだか仄暗い雰囲気が漂う話。

 

定義が広すぎる。
『王道ファンタジー』という言葉でパッと思いつくディズニーのシンデレラですら原点のグリム童話を辿れば魔法使いもいなければ足を削ぎ落としたりしているのでダークじゃないファンタジーなんて本当はないのかもしれない。

 

当方もダークファンタジーという言葉とキービジュの写真&パケ裏の情報だけの段階だと『可哀想な女の子がファンタジー世界を冒険するけど実はその世界は…』みたいな話かな、と思っていた。がっかりしたのはそこらへんの予想との齟齬もあるかも。もっとメルヘンかつグロテスクな世界が見れると思ってたので。

その上でパンズ・ラビリンスを端的に説明しろと言われたら『可哀想な女の子が現実とファンタジーを行ったり来たりする話』と言うしかないな…。


人によって評価は分かれる。でも雰囲気が好みならとことん好きになれるかも。そんなパンズ・ラビリンスでした。