御託はいいから00年代深夜アニメの話をさせてくれ②〜05年編〜

2005年。当時小学6年生。私は干からびていた。
中流家庭の宿命、中学受験である。
難関校を目指していたわけではないが既に理数ドロップアウト文系人間と化していた私は国語と算数で偏差値が30くらい違うという有様でありヒイヒイ言いながら大して難しくもない算数の問題に苦心していた。
そんな春のある日。学校から帰ったら巨大な段ボール箱が3箱ほど積まれていた。

『受験終わるまでマンガとゲームは封印ね』

母から発せられた無慈悲な宣告に、私はその場に崩れ落ちた。
しかし泣けど喚けどどうにかなる訳でもない。たまたま変な所にしまっていたり家具の隙間に落ちていたりして母の手を逃れた数冊のマンガをなんとかかき集め、約一年の娯楽断ち生活が始まった。

とはいえ。
PSXに関してはPS2のコントローラーやソフトこそ封印されてしまったものの本体は家族共用のレコーダー&DVDプレーヤーとして絶賛稼働中だったためそのまま野放しになっていた。
つまりアニメは見れるということだ。この事実は私の心のオアシスとして一年間を耐え忍ぶ大きな支えになった。ありがとうPSX。ありがとう深夜アニメ。

そんなわけで前置き長くなりましたが05年編です。本数少なめですが文字は多めです。
今回もこちらの順に。
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=1593649

 


まほらば〜Heartful days

私は生粋のガンガンっ子である。初めて全巻集めたマンガは魔法陣グルグルハレグゥだ。ガンガンの姉妹誌、当時はめっちゃたくさんあった。Gファンタジー、JOKER、そしてWING。いぬぼくでおなじみの藤原ここあ氏の初連載作『dear』もWINGだ。それと同時期に連載されていたのがこのまほらば。WING、結構良作たくさんあった気がするんだけどなぁ。

まほろば』とよく間違えられるのはもはやお約束。
絵本作家の夢を目指し上京してきたフニャチン主人公が出会ったのは多重人格のJK大家さんこと梢ちゃんとクセの強い住人たちだった——という萌え版めぞん一刻

例によって連載中でのアニメ化だったのでラストはアニオリにせざるを得なかったのだがその後の原作の展開からのラストを見てもよくまとまってたと思う。

 

上記のあらすじだけだと普通のラブコメにしか見えないのだが、『多重人格』という設定をただのキャラ付けではなくしっかりと『解離性同一性障害という病気』として扱っており、発症から治癒に至る過程も実在のそれを踏襲している。
ましてや今はめんどくせ〜世の中だし当時であってもフィクションとはいえ実在の病気をモチーフにするのは色々とリスキーなのでいわゆる『多重人格キャラ』というのはもう一人の僕的なスタンドのような存在として『あくまでファンタジー』として描写されるのがほとんどだったが、周囲の人々が『病気』として認識し(当人は無自覚)、正面から向き合っていくという中々踏み込んだ作品といえる。(もっとも通院している描写がないので『まず病院連れてけよ』というツッコミはあるが)

住人たちも一枚岩ではなく、皆明るく楽しく振る舞っているが各々が重すぎる程の過去を抱えている。虐待。自傷。天才ゆえの苦悩。駆け落ちの行く末。そして主人公に廻る因果。
涙なしには読めないシーンも多々。登場人物一人ひとりの背景描写がしっかりしているからこそ愛着が湧き、結果ヒューマンドラマとしてかなり秀逸な作品となっている。

 

原作の話ばかりになってしまった。
アニメの方はやっぱり病気関連の描写が放送倫理に引っかかるため『Heartful days』の副題通り軽めのハートフルラブコメの仕上がりになっている(原題は『まほらば』のみ)。2クール。
人格交代に関する詳細描写がないので梢がただの不思議ちゃんみたいになっているのはややマイナスだが、一部の人物に関してはしっかり原作通りに描かれているので安心してほしい(?)。「重すぎるのはちょっと…」という方はアニメの方がオススメかもしれない。

 

余談だが、作者は定期的に死亡説が流れるほどの虚弱体質でファンによく心配されている。まほらば完結前後あたりに医師に「このままだとあと5年以内に死にます」と宣告されたらしく以降はスローペースで活動している。たまに新作などの告知があると「新作だやったー!」という嬉しさより「元気そうでよかった…」という安堵が勝る。これからもお身体に気を付けて末長く活動していただきたい。

 

LOVELESS


多重人格主人公その2。
1話逃して3話あたりで初めて見たのだが『猫耳の生えた男の子』というビジュアルに衝撃を受けた記憶がある。

ちょうどこの年『電車男』のドラマが放映され、パンピにも『オタク』『萌え』『アキバ系』という概念が広く周知されることとなった。当時のオタク界隈の様子は計り知れないが、ドラマ経由でオタク文化に興味を持ち足を滑らせてしまった諸兄やアキバや2ch等の我々の隠れ家を土足で踏み荒らされて憤慨した諸兄など色々いたことだろう。
ネコミミ女子というのは当時、世間一般が想像する『萌え』のステレオタイプだった。そうでなくともオタクにとってはでじこの時代から猫耳=女子だった。
そんな先入観を覆され驚いたものだが、肝心のストーリーに関してはよく理解できなかったのでアニメはそこで切ってしまった。

 

というわけで原作の話をさせてください。
後年になりブックオフで原作を見かけて「あ〜昔アニメあったな〜」と思ってパラっと見たら絵が綺麗だったので買った。

2年前のとある事件をきっかけに人格交代を起こしたまま戻らなくなってしまった11歳の少年。こちらはちゃんと通院している。最愛の兄を亡くし、別人のようになってしまった息子を受け入れられない母からは虐待を受け、いつか消えてしまうという思いを抱えながら過ごす空虚な日々。そんな中現れた亡き兄の知人を名乗る謎の男——というボーイミーツボーイ(&ガール)。

1巻時点でのストーリーはリア厨でも恥ずかしくなるほどの厨二要素てんこもりマンガなのでここで失笑して切った人も多いかもしれない。今でも人に勧めるときは『1巻は我慢してくれ』とプレゼンしている。
だがそんな厨二異能力バトルの中にも光るものがあったから続きを読む決意をした。当時こそ表す言葉がなかったが今なら表せる、『エモ』である。

読み始めの所感は『なんか男同士の距離が近いな…』であった。ボーイズラブという概念はなんとなく聞いたことがあるが当時はまだ純真だった上に『恋愛』といえるほどイチャイチャしている訳でもない。そんな中急に現れたのは、『大学生の男が11歳の少年にピアスを開けさせる』というシーンだった。なんかすごいドキドキした。今日なら「エッモ………あとすけべすぎますねぇ…」みたいなクソ感想しか出てこないと思うのであの日の胸の高鳴りの感覚、忘れないようにしたい。

私は女子ゼロが一番好きです。絶対服従だった自分たちの創造主に初めて反抗し、映画のワンシーンのような逃避行に出る二人のJK、えもいえぬえも(©︎バーバパパ)。

そこからしばらく出番がなく、再登場したときには二人は元の生活に戻っていた。そして片割れが逃亡生活をやめた理由を『(愛する人に)ラブホの安っぽい歯ブラシを使わせてるのがなんか嫌になった』と語ったとき、ウッワこの作者天才だと思った。

色々な『愛の形』が見られるんですよね。恋愛未満の仄かな愛、がっつり肉体関係を伴う愛。愛とは名ばかりの主従関係、反対の対等な関係。異性同性愛。兄弟姉妹愛。偏愛。盲愛。
作中通すと男男の方が目立つが女女も上質すぎる。渚先生と妹のエピソードも最悪すぎて最高。

 

ただ、作者をご存知の方はもうおわかりだろう。
2001年月刊連載開始、既刊13巻。
この数字を見れば知らない方もお察しいただけると思う。ちなみに最新()刊13巻発売が2017年で、13巻収録分以降本誌に掲載された様子は2022年現在ない。

とある人曰く、この手の傾向は同人上がりのプロ漫画家に多いという。元々同人作家なので『自分の好きなもの、良いと思ったシーンしか描きたくない』という意識が強く、そこを描ききってしまうと途端に停滞したり絵が雑になったりする。これは『好きなことを仕事にする』ことへの今尚根深い問題だが、プロの世界でそんな我儘は許されない。しかしなまじ有名壁サーなので一次でも同人出せばがっつり儲かるし、特に90年代の超同人バブル時代の作家は既に一財を築き上げた者も多く働かなくても、最悪打ち切られても困らない、という状態にあったりする。そして編集側も描いてくれなくても一応『大先生』なので囲っておきたいというジレンマを抱えている、という仕組み。

もっともこれは一例であり、本当に心身を壊してしまった人などもいるので一概には言えないということを記しておく。だがこの手のタイプの作家が描く作品は本当に特定シーン(筆が乗ってるときのシーン)の爆発力というのが桁違いで、ゆえに鮮烈な記憶として残りやすいのが魅力だと考える。


この作者に関しては『完結させられない病』と揶揄されるくらいなので本作ももう完結は無理だろう…というのがファンの本心である。それでも……続き、読みたい………!H×Hも連載再開したんだから少しずつでいいから描いてほしい……な……。


おくさまは女子高生/奥様は魔法少女


04年に放送されたドラマ『奥さまは魔女(日本版)』に乗っかったタイトルたち。米倉涼子が可愛かったのと泰造が役者として結構やれてたのと夏木マリの魔女がハマり過ぎてて笑った記憶がある。
ドラマ見てたので引っ張られて見てみたけど前者は普通のお色気ラブコメ、後者に関しては全く記憶がない。


苺ましまろ


個人的伝説のギャグ漫画。リアタイ未視聴。
ギャグ漫画フリーク(とロリコン)の中では名の知れた作品だと思っている。松岡美羽は笑いの師。
緻密な作画(特に服がかわいい)と日常系ののんびりした空気から放たれるキレッキレのギャグ。


そしてこの作品を語るのに欠かせないのが、LOVELESSを超える遅筆っぷりである。
2001年月刊連載開始、既刊8巻。
奇しくも最新()巻である8巻はLOVELESSと同じ2017年。もうこうなったらどっちが先に新刊が出るかでギャンブルできるね。たぶん無効試合で終わる。

中学時代の友人に勧められて借りて読んで爆笑して自分でも全巻揃えた。アニメはその後TSUTAYAで借りて見た。アニメは伸恵姉ちゃんが未成年飲酒喫煙無免許運転その他問題行動のオンパレードなので年齢が高1→20歳に修正されている。それ以外は概ね原作通りだったとは思うのだが、いかんせん『パワーが足りんな』という感想に落ち着いた。あのキレと疾走感はアニメでは再現しきれなかった模様。


灼眼のシャナ


これ05年放送だったっけ。自分で録画したのではなく帰省したときにアニマックスで22時くらいにやってたのをたまたま見ただけな気がする。のでアニメは飛び飛びでしか見てないと思う。
中学に入ってから初めて触れたラノベで、厨二病最盛期だったのもあってゼロ魔と一緒にどっぷりハマった。

小難しい漢字多めのワードにハチャメチャなルビつけて読ませるやつ、なんだかんだオタクはみんな好きなんだ。こうして今も擦り続けるくらいなんだから。


とにかくシャナと悠二が結ばれてほしかったので吉田が大ッッッ嫌いでした。吉田派の人はごめん。同様の理由でゼロ魔シエスタとアンリエッタも嫌いだった。シエスタは割と早めに身を引いたけどアンリエッタはいかにも強かな女でイヤだったな〜。それまであんまり特定キャラを嫌いになることってなかったんだけど人生で初めて『特定キャラを嫌いと認識した』作品がこの二つ。アンチという概念の目覚めである。


ゼロ魔は割と早めにヒロイン戦争決着したのに対しこちらはズルズル延びるばかりで、何巻だったか失念したが『クリスマスの日、駅の北口と南口(西と東だったかも)にそれぞれシャナと吉田が立ち、悠二が選んだ方と結ばれる』という展開になったとき「やっと決着が…!」と湧いたが結局悠二は辿り着く前に失踪、まさかのラスボスとして覚醒という超展開にズコーとなると同時にもうここで切る決心をした。
後年に調べたところ無事シャナと悠二が添い遂げる形で完結したと聞いて安心した。


BLACK CAT


ある種伝説のアニメ。
ちょうど友人が原作にハマっており、受験が終わった後貸してもらって一気に読んだ。2クールでちょうど読み終わったときにはまだ放送中で、既に完結してたしあと数話しかないけど今から見ても間に合うっしょ!と録画した。見た。そこにあったのは『私の知ってるBLACK CATと違う』だった。
最初からアニオリならそうと言ってくれ。そう叫ぶしかできなかった。そして毎週録画設定をそっと解除した。


今でこそお色気の神として崇められる矢吹神であるが私の中ではずっとBLACK CATのイメージである。『レールガン(笑)』とか揶揄されることもあったけど厨二病患者には充分すぎるほどぶっ刺さった。ナンバーズに入るのが夢でした。ⅩⅢ機関はナンバーズのパクリ。
そんな神は今でもBLACK CATのことを大事にしてくれており、時々トレイン達の新規絵を上げたりしてくれるのはファンとしては嬉しい限りである。

 

ノエイン もう一人の君へ


未視聴なんですがこれに関するエピソードという名の自語りいっすか。興味ない方は飛ばしてください。


私のクラスは荒れていた。4年間で悪名を築き上げてきた名だたる悪ガキどもが5年生のクラス替えで一ヶ所に集められたところにあてがわれたのはベテランだけど気の弱いおばちゃん先生だった。采配ミスにも程がある。当然ナメ臭られ勃発する学級崩壊。授業中は悪ガキどもは席を立ちグループで固まって雑談やトランプをして好き勝手過ごし、我々受験組は塾の宿題を持ち込みせっせと内職していた。


先生には申し訳ないとしか言いようがないが、先生という共通のターゲットを得たことにより同級生同士の仲は比較的良好であり、ひとりの児童から見れば平和な環境であった。悪ガキ、ギャル、真面目ちゃん、変人、そしてオタク。派閥同士で衝突することもなくそれぞれが勝手に仲間内で仲良くやっていた。本来ならカーストぶっちぎり最下位の我々オタクグループも特に揶揄われたりすることなく教室の隅でデュフデュフ言いながら絵を描いたりなどして平穏に過ごしていた。


話は変わるがこの時期、多くの少年(と一部の少女)はコロコロという古巣から羽ばたき、ジャンプへと渡っていく。

私は前述の通りコロコロとガンガンの二重国籍であり、少し前にコロコロという家を引き払う形でガンガンへの永住を決めた。(今でもコロコロ作品は大好きです。こないだドラベース読み返して泣いた)

兄がいる子は比較的早めに巣立つ傾向があり、BLACK CAT貸してくれた子をはじめつるんでいたオタク仲間も既にジャンプへのランディングを終えていた。
そんな感じで周りにマンガ好きは一気に増えたが、深夜アニメの話はまだまだ通じなかった。厨二病が栄華を迎えていた私は

『俺みたいな小6で深夜アニメ見てる腐れ野郎、他に、いますかっていねーか、はは(好きな音楽:アリプロ)』

横流しされるマンガを適当に捌きながら過ごしていた。

そんなある日のことである。いつものように誰も先生の話なんて聞いちゃいない終礼で、『今日ノエインの日だ!!!!!』と叫ぶ声がした。びっくりした。声の方を見たら悪ガキグループの一人だった。彼の家庭は放任気味で、好き勝手夜更かししても誰にも咎められず深夜まで起きていてノエインを見ていたのだと思う。一瞬同士か!?とソワッとした。でもそれ以外に彼がマンガやアニメの話をしているのを聞いたことがないし何より悪ガキは陰キャにとっては恐ろしかったのでそっと着席した。
というだけの話。


まとめ


当時は多忙であまり見れなかったが深夜もそれ以外も中々豊作の年。アクエリオンバジリスク地獄少女金卵、マイメロディ
このあたりから一気に盛り上がってきた感がある。
余談だが受験が無事終わり、娯楽が解禁された日は6時間ぶっ通しでGCどうぶつの森+をやった。何でだよ。もっとなんかあるだろう。